PRODUCTION NOTE
驚異のベストセラー小説×名匠アン・リー
原作者を興奮させたプロジェクトの始動
すべては、この10年のうちに出版界で起きた最大の出来事のひとつであるヤン・マーテルの人気小説「パイの物語」から始まった。この小説は名声あるブッカー賞を受賞し、1年以上もニューヨーク・タイムズのベストセラーの座を占めた。製作のギル・ネッターがその魅力を語る。「原作には、映画で観たいと思う要素がすべて含まれている。しかも、それは映画でしか手にできないものなんだ」。ネッターとフォックス2000ピクチャーズの製作プレジデント、エリザベス・ゲイブラーは、数年間一緒にこのプロジェクトに取り組み、この物語が大きな映画的イベントになることに自信を持った。
ふたりはこのプロジェクトの強大なチャレンジに挑み、チャンスを生かすことのできる適切なフィルムメーカーとの出会いを辛抱強く待った。ネッターが説明する。「アン・リーとは長年一緒に仕事をしたいと思っていたし、彼は素材を見事に生かせるすばらしい才能を持ったアーティストだ」。

3000人の中から大役に選ばれた新星スラージ・シャルマの壮大な挑戦
主人公パイ・パテルのキャスト探しは、インド全国で広範に行われ、3000人以上の若者がオーディションを受けた。最終的にリー監督、キャスティング・ディレクターのアヴィー・カウフマンのチームがパイに選んだのは、両親と一緒にデリーで暮らす17歳の学生スラージ・シャルマだった。「とても不安だったよ。特に最終オーディションがきつかった」。スラージが当時を振り返る。「本当にぶるぶる震えていた。だがアンと5分間話をして、これは彼の特徴というか、誰でも彼と一緒にいると、なぜかとても落ち着いた気持ちになれるんだ。アンのおかげで僕は落ち着き、シーンの読み合わせをやった。何が起きたのか分からないけれど、あれはそれまでのオーディションで最高の出来だった。あの部屋にいた人たちが皆、とても嬉しそうにしていた」。
スラージを抜擢したリー監督が語る。「我々が探していた若者には、人の注意を捉えるような純真さがあり、心に訴える内面を見せる能力、それにこの旅を経験するパイに必要な身体性が必要だった。彼はオーディションの演技で感情をあふれさせた。しかも、それをほとんど目の力だけで伝えたんだ。この物語の世界を信じ、そこで息づくことのできる彼が生まれながらに持っていた才能は、滅多にない宝物だね」。

映画に豊かなアクセントを添えたユニークで壮大なロケーション
本作の撮影は主にインドと台湾で行われた。「インドはとても多くのことが可能な場所だ」原作者マーテルが語る。「そこでは無限のストーリーが生まれる。不思議なストーリーや、現実的なストーリーも。インドは物語を生む母のような豊かな源泉だ」。
映画製作のほとんどは、映画のために作られた世界最大の大きさで、波を作る機能を備えたタンクで撮影された。台湾の台中にあるかつては空港だった場所に設置されたタンクは70メートルの長さ、30メートルの幅で深さは4メートル、水量は170万ガロン、その上、さまざまな種類の水の動きを作り出せる。“ツシマ号”が沈没し、巨大な“神の嵐”が襲うシークエンスでは、タンクの水の動きはCGで合成された。「あのタンクを自分の家のように感じていたよ」そこでの経験を通して海について多くを学んだスラージが語る。「映画で見ると分かるけれど、海は気が変わりやすいんだ」彼が説明する。「モンスターに見える時も、鏡のようになる時もある。殺し屋にもなれば、救世主にもなる。海はすてきなものだよ。」

最先端のデジタル技術で創り出されたベンガルトラのリチャード・パーカー
 パイの旅の道連れとなるリチャード・パーカーは、ほとんどが高度なCG技術で創り出された。それを指揮したのは『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』などの視覚効果スーパーバイザー、ビル・ウェステンホファーだ。『猿の惑星:創世記』が生んだ革新的なキャラクターCG技術を基にしたデジタル・マジックは、トラの姿や行動の参考となった4頭の本物のロイヤル・ベンガルタイガーと見分けがつかないほどリアルに感じられるクリーチャーを生み出した。視覚効果チームは、動物を擬人化することは避け、微妙な動物の雰囲気を維持することにした。