幸せへのキセキ

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INTRODUCTION

天国から見守ってほしい。僕たちの人生初の冒険を─

 最愛の人を亡くし、悲しみのどん底にあった主人公が、廃園寸前の動物園の再生を通じて自らも再生を果たしていく。奇跡のような実話に基づくヒューマンドラマが誕生した。
『幸せへのキセキ』は、英国の新聞コラムニスト、ベンジャミン・ミーの自伝の映画化。目の前に数々の障害が立ちはだかる中、絶対にあきらめない気持ちで動物園の再建に立ち向かうベンジャミン一家と仲間たちの姿に、とびきりの勇気と希望をもらえる珠玉の感動作だ。
世界を感動で包んだ実話を、誰にでも起こりうる奇跡として描いたのは、『ザ・エージェント』のキャメロン・クロウ。主人公を『ボーン』シリーズ、『ヒア アフター』のマット・デイモンが演じ、彼を支える動物園の飼育係をスカーレット・ヨハンソンが演じる。脚本は『プラダを着た悪魔』のアライン・ブロッシュ・マッケンナ。そして音楽を、シガー・ロスのフロントマン、ヨンシーが手がけている。
果たして彼が動物園を買った本当の理由とは──? ラストシーンに、愛する人をもっと大切にしたくなる、素敵なサプライズが待っています。

STORY

最愛の人の死から立ち直るまでの"軌跡"を描いた、"奇跡"の実話

  半年前に最愛の妻を亡くしたベンジャミン、彼の14歳の息子と7歳の娘は、いまだ悲しみと混乱の中にいた。ベンジャミンは仕事を辞めてしまい、息子は問題を起こして退学処分に。新しい場所で新しい人生を始めようと、ベンジャミンは郊外に家を買うが、なんとそこには閉鎖中の〈動物園〉というオマケがついていた!
 さっそくベンジャミンは動物園の再オープンに取り組むが、慣れない事業にトラブル続出、莫大な修理費や薬代で資金も底をつく。だが、飼育員と地域の人々、亡き妻からの贈り物に支えられ、ベンジャミンは再び冒険に立ち向かう。妻とのある約束を果たすために──。

CAST

STAFF

キャメロン・クロウ(監督・製作・脚本)

1957年カリフォルニア州生まれ。15歳で高校を卒業。ローリング・ストーン誌のスタッフとなり、寄稿エディターからアソシエイト・エディターになる。22歳のとき、南カリフォルニアの高校に潜入取材。これをもとに書いた本はベストセラーとなり、映画化にあたって脚本も執筆。完成した『初体験/リッジモント・ハイ』(82)はヒットを飛ばし、クロウはアメリカ脚本家組合賞にノミネートされた。7年後に脚本も兼ねた『セイ・エニシング』(89)で監督デビュー。続く『シングルス』(92)は、グランジ・ロック&ファッションのトレンドを盛り込んだ群像劇として話題を呼ぶ。さらに、トム・クルーズを主演に迎えた監督第3作の『ザ・エージェント』(96)は、作品賞とクロウの脚本賞を含むアカデミー賞5部門にノミネートされ、キューバ・グッディング・Jrが助演男優賞を受賞した。クロウはアメリカ脚本家組合賞に加えてアメリカ監督組合賞の候補にもなった。監督第4作の『あの頃ペニー・レインと』(00)は、ローリング・ストーン誌に寄稿していた少年時代の体験をベースにした自伝的な作品で、クロウは英米アカデミー賞の脚本賞を含む数々の賞を受賞。前作に続き、アメリカ脚本家組合とアメリカ監督組合賞にノミネートされた。その後、スペイン映画の『オープン・ユア・アイズ』をリメイクした『バニラ・スカイ』(01)と、オーランド・ブルーム主演の青春ロードムービー『エリザベスタウン』(05)を監督。昨年は、初の音楽ドキュメンタリーとなる『パール・ジャム20』(11)を発表し、話題を集めた。また、エルトン・ジョンとレオン・ラッセルのコラボレート・アルバムのメーキングに密着した『The Union』(11)は、トライベッカ映画祭でプレミア上映され好評を博した。

アライン・ブロッシュ・マッケンナ(脚本)

1967年ニュージャージー州生まれ。スマートで共感を呼ぶストーリーの紡ぎ手として女性に人気の高い脚本家。ローレン・ワイズバーガーの原作を映画化した『プラダを着た悪魔』(06)の脚本で、英アカデミー賞、USCスクリプター賞、アメリカ脚本家組合賞にノミネート。続く『幸せになるための27のドレス』(08)はキャサリン・ハイグル主演で映画化され、大ヒットとなった。さらに、TV界を題材にした『恋とニュースのつくり方』(10)でも軽妙なセリフと新鮮なアプローチが高い評価を受けた。

ジュリー・ヨーン(製作)

1969年生まれ。タレント・マネージャーから出発し、ハリウッドで20年近いキャリアを築きあげた。現在は、ビジネス・パートナーのリック・ヨーンと共に設立したプロダクション会社を通じて数々のヒット作、話題作を生みだしている。おもなプロデュース作品に、『アニマル・ファクトリー』(00・未)、『恋愛依存症』(06・未)、『マックス・ペイン』(08)、『アンストッパブル』(10)、『赤ずきん』(11)などがある。

リック・ヨーン(製作)

1968年生まれ。プロデューサーとして、エドワード・バーンズ監督の『サイドウォーク・オブ・ニューヨーク』(01)やジョー・ジョンストン監督の『ウルフマン』(10)を製作した。製作総指揮を手がけた作品に、マーティン・スコセッシ監督の『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02)と『アビエイター』(04)、ジョン・ムーア監督の『マックス・ペイン』(08)、トニー・スコット監督の『アンストッパブル』(10)がある。

イロナ・ハーツバーグ(製作総指揮)

ジョナサン・デミ監督とのコンビで知られ、『クライシス・オブ・アメリカ』(04)と『ニール・ヤング/ハート・オブ・ゴールド ~孤独の旅路~』(06・未)の製作、『シャレード』(02・未)と『レイチェルの結婚』(08)の製作総指揮を手がけた。その他製作総指揮を務めた作品は、『激流』(94)、『ウォーターワールド』(95)、『ダンテズ・ピーク』(97)、『13デイズ』(00)、『恋するベーカリー』(09)など。

ロドリゴ・プリエト(撮影監督)

1965年メキシコ生まれ。アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の『アモーレス・ペロス』(99)で国際的な名声を築き、同監督の『21グラム』(03)、『バベル』(06)、『BIUTIFUL ビューティフル』(10)の撮影も担当。アン・リー監督の『ブロークバック・マウンテン』(05)でアカデミー賞候補となり、シカゴ映画批評家協会賞、フロリダ映画批評家協会賞などを受賞した。その他、撮影を手がけた作品に、『8 Mile』(02)、『フリーダ』(02)、『25時』(02)、『アレキサンダー』(04)、『ラスト、コーション』(07)、『消されたヘッドライン』(09)、『抱擁のかけら』(09)、『ウォール・ストリート』(10)、『恋人たちのパレード』(11)などがある。

クレイ・グリフィス(プロダクション・デザイン)

キャメロン・クロウ監督の『あの頃ペニー・レインと』(00)でプロダクション・デザイナーとしてデビューし、美術監督組合賞にノミネートされた。クロウとは、『エリザベスタウン』(05)でもコンビを組んでいる。その他、プロダクション・デザインを手がけた作品に、『私は「うつ依存症」の女』(01)、『ドメスティック・フィアー』(01)、『メラニーは行く!』(02)、『僕はラジオ』(03)、『ラッキー・ユー』(07)、『デイブは宇宙船』(08・未)などがある。

マーク・リヴォルシ(編集)

キャメロン・クロウ監督作は、『あの頃ペニー・レインと』(00)、『バニラ・スカイ』(01)、『エリザベスタウン』(05)で編集補佐や追加編集を担当。『ウェディング・クラッシャーズ』(05・未)と『プラダを着た悪魔』(06)でアメリカ編集者協会のエディ賞にノミネートされた。その他、編集を手がけた作品に、『エイプリルの七面鳥』(03)、『ブラザーサンタ』(07)、『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』(08)、『しあわせの隠れ場所』(09)などがある。

デボラ・L・スコット(衣裳デザイン)

ジェームズ・キャメロン監督の『タイタニック』(97)でアカデミー賞の衣裳デザイン賞を受賞。キャメロン監督作は『アバター』(09)の衣裳も手がけ、衣裳デザイナー組合賞にノミネートされた。その他、衣裳デザインを担当した作品に、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)、『フーズ・ザット・ガール』(87)、『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』(94)、『マイノリティ・リポート』(02)、『トランスフォーマー』(07)シリーズ、『ラブ&ドラッグ』(10)などがある。

ヨンシー(音楽)

1975年アイスランド生まれ。1994年に結成されたバンド、シガー・ロスのリードボーカルとして、世界中で高い人気を得ているミュージシャン。シガー・ロスのメロディアスな楽曲は、キャメロン・クロウ監督の『バニラ・スカイ』(01)をはじめ、『ライフ・アクアティック』(05)、『127時間』(10)、『きっと ここが帰る場所』(11)などにsi使用されている。バンド活動のかたわらソロ・アーティストとしても活動し、『ヒックとドラゴン』(10)のエンド・タイトルを作曲した。

予告篇
TVスポット

PRODUCTION NOTES

喪失感がエネルギーに変わることの素晴らしさを教えてくれる物語

 本作の企画は、プロデューサーのジュリー・ヨーンが、動物園購入の経緯を綴ったベンジャミン・ミーの著書に目を止めたときから始まった。「"We Bought a Zoo"という本の題名に惹かれたんです」とヨーンは語る。「"動物園を買った"ってどういう意味だろう?誰が買ったの?と思いました。そして読んでみて、心が温かくなり、元気になれるストーリーだと感じました」
 本に加えてベンジャミンの経験を描いたBBCのドキュメンタリー番組も見たヨーンは、ベンジャミンに連絡をとり、映画化権を取得。『プラダを着た悪魔』(06)のアライン・ブロッシュ・マッケンナに脚本化を委ねた。マッケンナは語る。「私は職場を舞台にした映画が得意ですが、動物園が職場だなんて素敵なことです。本を読んですぐに、面白い映画になると確信しました」
 マッケンナが脚本の第1稿を書き上げると、ヨーンは監督探しに着手。すぐに、コメディ要素とドラマ、家族、ポジティブな姿勢といった要素を融合させる才能に長けたキャメロン・クロウに白羽の矢を立てた。「クロウがオリジナル脚本以外の作品を作っていないことは知っていました」とヨーンは告白する。「でも、この物語が持っている喪失と癒しというテーマは彼の映画に通じるところがあります。それに彼も子供を持つ父親なので、共感してもらえるものがあるのではないかと思いました」
 ヨーンの予想どおり、脚本を大いに気に入ったクロウは監督のオファーを快諾した。「マッケンナの脚本とベンジャミンの原作の組み合わせに強く惹かれたんだ」と、クロウは説明する。「2つを一緒にすると大きな可能性を感じた。"音楽"が聞こえ、ベンジャミン一家の愛を感じられる気がしたよ」
 マッケンナと共に脚本の改訂に着手したクロウは、ベンジャミンの人物像をより深く掘り下げ、彼を突き動かしたものを探り、熱い気持ちと詩的な雰囲気を付け加えた。それらの作業を通じて、クロウは意外な事実を発見する。それは、「ベンジャミンの話を伝えることは、自分が作った他の映画と同じくらい私的なものだった」ということだ。クロウは語る。「この映画を作りたかったのは、喜びの種を蒔きたいと思ったからだ。この映画は幸せな気持ちになれるところがいい。生きる意味を感じ、喪失感が意欲やエネルギーに変わることの素晴らしさを教えてくれるんだ」

ベンジャミン・ミー役のイメージの元になったマット・デイモン

 脚本の第1稿を執筆するとき、脚本家のアライン・ブロッシュ・マッケンナは、マット・デイモンをイメージしてベンジャミンの役を書いた。そして、そのイメージは、監督のキャメロン・クロウにも受け継がれた。「マットはいつも信頼できる感じがするが、原作とマッケンナの脚本に書かれたベンジャミンも同じように信じられる人物だった」と、クロウは語る。
 売れっ子のマットにベンジャミン役をオファーするにあたって、クロウはユニークな方法をとった。脚本と一緒に、1時間近い音楽のセレクションと、『ローカル・ヒーロー/夢に生きた男』(83)のソフトを送ったのだ。「それらがひとつのパッケージにまとまっていて、"僕がやりたいのはこういう感じのものだ"と言われた」と、マットは説明する。「『ローカル・ヒーロー/夢に生きた男』はドラマティックだけど同時に笑えるところもあるし、楽しさと哀しみの両方が味わえる映画だと説明された。おかげでクロウがどういう映画を作りたいかがよくわかった。この役を引き受けたのは、彼が監督だからだよ」

フレッシュな魅力を放つ役者陣

 チーフ飼育員のケリーを演じるスカーレット・ヨハンソンは、マッケンナとクロウが書いた脚本に興味を惹かれた。「私を夢中にさせる素敵なセリフがあったの」と、ヨハンソンは語る。「それにストーリーがとても変わっていると思った。家族のことや、自分の情熱を見つけ、自分の力を信じることが描かれている。とてもリアルでガッツのある話で、恐怖を克服することも真正面から見据えているの」
 ケリーの従姉妹のリリーには、『SUPER 8/スーパーエイト』(11)のエル・ファニングが抜擢された。撮影中に13歳の誕生日を祝った彼女は、自身の役柄についてこう説明する。「リリーはずっと動物に囲まれた生活をしてきたから、人との付き合い方を知らないの。ベンジャミンの息子のディランの気を惹こうとするけれど、男の子を好きになったことがないのでどうすればいいかわからない。それでも彼女は、ディランに自分のほうを向いてほしくて頑張るの」
 そのディランを演じるコリン・フォードと、ディランの妹のロージーを演じるマギー・エリザベス・ジョーンズは、全米各地とオンラインを通じて行われたオーディションを勝ち抜いて選ばれた。彼らと共に動物園のセットで過ごした数カ月の撮影は、マットにとって、仕事だけに終わらない実りのある経験になったという。「子供たちと一緒の撮影はよかったよ。うちの子供たちもセットに来て彼らと交流できたしね」とマットは言う。
 マットをはじめとする役者陣は、2週間のリハーサル期間中、ムーアパーク・カレッジ・ティーチング・ズーにある"動物学校"に入門。動物コーディネーターのマーク・フォーブスの指導のもと、飼育員の話を聞き、共演者となる様々な動物について学んだ。

9カ月かけて建設された動物園のセット

 ローズムーア動物アドベンチャー公園の場面は、ロサンゼルスの北30マイルのサウザンドオークスにあるグリーンフィールド・ランチで撮影された。動物園のセットには、動物たちの囲いのほか、歩道や噴水、展望台、彫刻の庭、円形演舞場なども建てられたが、その設計と建設には9カ月の歳月が費やされた。
 動物園のデザインを手がけるにあたり、プロダクション・デザイナーのクレイ・グリフィスは、アニマル・コーディネーターのマーク・フォーブスと会い、動物の囲いの配置についてアドバイスをもらった。「マークから"トラはクマのそばにしないでください。ライオンとトラがお互いに見える位置はやめてください。ライオンやトラやクマには、蹄のある動物を見せてはダメです"と言われたので、"それじゃ動物園をバラバラに切り離すってことだね"と言ったんだ」とグリフィスは笑う。「それぞれの囲いの配置を考えるのに、とんでもなく時間がかかったよ」
 フォーブスと30人の専門の動物トレーナーで構成されたチームは、アフリカ・ライオン、ベンガルトラなど75種類の動物を扱った。それらの動物はすべて、飼い主やトレーナーと一緒に住まいを与えられ、南カリフォルニア地区の様々な動物施設に収容された。そして、撮影中は、毎日必要な動物だけを動物園のセットに連れてくるやり方が取られたので、動物たちがセットの囲いの中で待機させられることはなかった。

COLUMN

この映画はヨンシーの音楽でパーフェクトになった

 「Rolling Stone」誌出身のキャメロン・クロウ監督は、劇中の音楽の使い方に長けていることで有名だ。彼は『幸せへのキセキ』の撮影中も常に音楽をかけていたという。リリー役のエル・ファニングが話す。「どんなシーンでも、その空気を表現するような曲をキャメロンが選んでくれた。ちなみに私のテーマ曲はキャット・スティーヴンスの“Don’t Be Shy”。リリーの重要なシーンでは必ずこの曲をかけてくれたけど、それがすごく良かったわ」。
 反抗期のディランが問題を起こし、父親のベンジャミンが学校に呼び出されるくだりでは、ディランの心情を表すかのように、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの“DON’T COME AROUND HERE NO MORE”が流れる。その他、今年の第54回グラミー賞で最優秀新人賞など2部門を受賞したボン・イヴェールの“HOLOCENE”を早くから採用するなど、冴えたセンスは相変わらずだ。
 なかでも、オリジナルスコアにヨンシー(シガー・ロス)を起用したのは素晴らしい。ちなみにシガー・ロスが2作目のオリジナル・アルバム「Ágætis byrjun(アゲイティス・ビリュン)」で世界的に注目を浴び始めた頃、クロウは『バニラ・スカイ』(01)に彼らの曲を使い、さらにブレイクするきっかけを作った。
 サウンドトラックのライナーノーツに自ら記しているが、『幸せへのキセキ』の製作には当初からシガー・ロスの音楽を広く利用していきたいと考え、準備用として、キャストとスタッフ全員に彼らのドキュメンタリーDVD「HEIMA〜故郷」を配ったという。監督が電話インタビューで語ってくれた。
 「この映画を通じて伝えたかった要素を持っていたのがヨンシーなんだ。彼の音楽は感情的なフィーリングがあるから、それを映画に持たせたかった。ベンジャミンがキャサリンとの思い出を探しているシーンで“Thinking Friendship”を流してみたら、それを聴いたマット・デイモンが、俳優のマットとして心を強く揺り動かされて泣き出した。あのシーンは、あの曲を聴いて泣いているんだよ」
 マットはすぐにヨンシー(シガー・ロス)中毒になり、「このシーンで“Go Do”をかけてほしい」とリクエストしながら、演技のスイッチを入れていったという。それを見たクロウは、ヨンシーに「映画のスコアを書いてほしい」と脚本を送って打診。ヨンシーが脚本を読み、すぐに受諾してくれたので、今度はマットが泣いたシーンを添付してメールを送ると、偶然バンドが活動を休んでいた時期だったため、アイスランドから飛んできてすぐに曲を書き始めた。
 「この映画を作りたかったのは、“喜びの種”を蒔きたいと思ったからだ。本作は、幸せな気持ちになれるところがいい。生きる意味を感じ、喪失感が意欲やエネルギーに変わることの素晴らしさを教えてくれる」と、クロウ監督は話すが、ヨンシーの音楽はまさにピッタリなのである。
 ヨンシー・バーギッソンは10代で友人とシガー・ロスを結成し、今やビョークと共にアイスランドを代表する世界的バンドとして、独創的な音楽で魅了してきた。また、パートナーのアレックス・ソマーズとは美術展などアート活動を行う一方で、アルバム「Riceboy Sleeps(ライスボーイ・スリープ)」を発表。2010年には初のソロ・アルバム「Go」を発表した。ソロ公演ではアニメーションの動物が多数登場するインスタレーションを使ったパフォーマンスを披露していたため、そういった点からも、ヨンシー自身この映画に共感する点が多かったのだろう。“喜びの種”を象徴するかのように、ベルやオルゴール、トイピアノなど、クロウ作品に無縁と思われた楽器を多用し、初の映画スコア担当ながらヨンシーの曲調としても明るい音色が弾んだこれらの音楽で、この作品の情感を色付けすることに成功した。サントラにはソマーズと共同プロデュースしたスコア9曲に加え、ヨンシーとクロウが共作した“Gathering Stories”など書き下ろしが2曲、他にシガー・ロスやヨンシーのソロ曲を計4曲収録。編曲と指揮はヨンシーのソロ作、ビョークやアントニー・アンド・ザ・ジョンソンズとの仕事でも知られるニコ・ミュリーが担当した。 キャメロン・クロウ監督は、「彼の音楽は、作品のあらゆる起伏を見せ、情熱を伝える役目をしてくれる。音楽の力は映画を完全なものにするんだ」と語る。終盤で、動物園に人が押し寄せる場面があるが、これはシガー・ロスのDVD「HEIMA〜故郷」へのオマージュとして、彼らのコンサートに歓喜したファンがなだれ込むシーンからイメージしたもの。“喜びの種”が開花した瞬間をそこで具現化し、そして映画は心に新たな種を蒔く、とっておきのラストシーンへと流れていく。 (伊藤なつみ)

サウンドトラック「幸せへのキセキ」
 5月30日発売予定 (輸入盤:発売中) SICP-3508 \2,520(税込)
 発売元: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル

実話から生まれた<奇跡>の物語

 この映画は、実際に「動物園を買った家族の物語」に基づいて描かれている。
 英国人作家ベンジャミン・ミーとその家族が、リスクを負いながらも荒廃した動物園を買い取り、200頭を超える動物たちを救い、新たな生活を始めるという驚くべき真実の物語である。
 イギリスの日刊紙「ガーディアン」でコラムニストをつとめていたジャーナリストのベンジャミン・ミーは、妻のキャサリン、2人の子供たち(現在8歳のエラと10歳のマイロ)と一緒に南フランスの片田舎で平穏な暮らしを送っていた。そんななか、妹メリッサから、「兄さんの夢のシナリオよ」という言葉とともに、荒れ果てた動物園付きの物件案内が送られてきた。
 父が亡くなり、母がひとりで大きな家で暮らしていることが気がかりだったベンジャミンは、家族が一緒に暮らすため、自分の夢のため、動物たちのために、その動物園を買うという人生を一変する決断をする。
 「動物園は誰も買い手がつかなかった場合には閉鎖されることになっていて、半数の動物は処分されるしかありませんでした。こういう種類の動物を短期間のうちに移動させるのは無理だからです。私たちは使命感に燃え、全力を尽くしてそこを買おうと思ったのです」
 しかし、実際に動物園を買うまでにさまざまな問題に遭遇する。気難しいオーナーとの交渉、ローンをしぶる銀行、兄弟との確執…など。
 2006年10月になんとか動物園に引っ越してきたベンジャミン一家だったが、その後も問題は山積みだった。劣悪な状態の家屋、深刻な飼育状況に置かれている動物たち、希望をもてなくなっているスタッフたち…、トラブルが続発する日々が続くが、ベンジャミンは一つずつ目の前の問題を解決していく。
 そんなある日、彼を打ちのめす最悪の出来事が起こった。いつも彼を支えてくれていた妻キャサリンの脳腫瘍が再発したのだ。
 ベンジャミンはあらゆる治療法を求め、献身的な介護を行うが、キャサリンは動物園の再始動を待たずに40歳でこの世を去ってしまう。そんな中でも動物園の開園準備を進めるベンジャミン。そのときの状態を、ベンジャミンはこう語っている。
 「生き延びるには私たちに頼るしかない動物たちの世話は、私のつらい気持ちを浄化してくれました。悲しみや喪失を感じながら、ふと窓の外を見るとそこでは日々の生活が続けられていました。動物園の生活では、人は延々と続く命と深く関わっているのです」
 多くの試練を乗り越えて、ベンジャミンの“ダートムーア動物園”は、明るい陽射しの中、2007年の7月にオープンする。ベンジャミンは、この自分の経験を、まずは新聞のコラムに掲載することにした。そして、2007年の秋には “Ben’s Zoo”という題名で4部構成のドキュメンタリーとしてBBC2で放映されて人気を博した。2008年には、ベンジャミンの奇跡の物語は1冊の本にまとめられ、その本、“We Bought a Zoo”(日本では『幸せへのキセキ~動物園を買った家族の物語』(興陽館)として2012年4月に発売)はイギリスでベストセラーとなった。
 現在、ベンジャミンは動物園の経営と講演に時間を割いている。講演では主に、自分の夢を追うことを積極的に奨励している。
 「人から不可能だと言われても私は決してあきらめません。あきらめるということは、失敗と同じです。どんなことでも実行してみれば、たとえ不可能に思える時でも成功するチャンスはあります。私の物語に触れてくれた人が、何かを感じてくれて、その人たちを励ますことができれば、とても嬉しいです」

原作本:「幸せへのキセキ~動物園を買った家族の物語」(興陽館刊)
 ダートムーア動物園 公式サイト:http://www.dartmoorzoo.org/