喪失感がエネルギーに変わることの素晴らしさを教えてくれる物語
本作の企画は、プロデューサーのジュリー・ヨーンが、動物園購入の経緯を綴ったベンジャミン・ミーの著書に目を止めたときから始まった。「"We Bought a Zoo"という本の題名に惹かれたんです」とヨーンは語る。「"動物園を買った"ってどういう意味だろう?誰が買ったの?と思いました。そして読んでみて、心が温かくなり、元気になれるストーリーだと感じました」
本に加えてベンジャミンの経験を描いたBBCのドキュメンタリー番組も見たヨーンは、ベンジャミンに連絡をとり、映画化権を取得。『プラダを着た悪魔』(06)のアライン・ブロッシュ・マッケンナに脚本化を委ねた。マッケンナは語る。「私は職場を舞台にした映画が得意ですが、動物園が職場だなんて素敵なことです。本を読んですぐに、面白い映画になると確信しました」
マッケンナが脚本の第1稿を書き上げると、ヨーンは監督探しに着手。すぐに、コメディ要素とドラマ、家族、ポジティブな姿勢といった要素を融合させる才能に長けたキャメロン・クロウに白羽の矢を立てた。「クロウがオリジナル脚本以外の作品を作っていないことは知っていました」とヨーンは告白する。「でも、この物語が持っている喪失と癒しというテーマは彼の映画に通じるところがあります。それに彼も子供を持つ父親なので、共感してもらえるものがあるのではないかと思いました」
ヨーンの予想どおり、脚本を大いに気に入ったクロウは監督のオファーを快諾した。「マッケンナの脚本とベンジャミンの原作の組み合わせに強く惹かれたんだ」と、クロウは説明する。「2つを一緒にすると大きな可能性を感じた。"音楽"が聞こえ、ベンジャミン一家の愛を感じられる気がしたよ」
マッケンナと共に脚本の改訂に着手したクロウは、ベンジャミンの人物像をより深く掘り下げ、彼を突き動かしたものを探り、熱い気持ちと詩的な雰囲気を付け加えた。それらの作業を通じて、クロウは意外な事実を発見する。それは、「ベンジャミンの話を伝えることは、自分が作った他の映画と同じくらい私的なものだった」ということだ。クロウは語る。「この映画を作りたかったのは、喜びの種を蒔きたいと思ったからだ。この映画は幸せな気持ちになれるところがいい。生きる意味を感じ、喪失感が意欲やエネルギーに変わることの素晴らしさを教えてくれるんだ」
ベンジャミン・ミー役のイメージの元になったマット・デイモン
脚本の第1稿を執筆するとき、脚本家のアライン・ブロッシュ・マッケンナは、マット・デイモンをイメージしてベンジャミンの役を書いた。そして、そのイメージは、監督のキャメロン・クロウにも受け継がれた。「マットはいつも信頼できる感じがするが、原作とマッケンナの脚本に書かれたベンジャミンも同じように信じられる人物だった」と、クロウは語る。
売れっ子のマットにベンジャミン役をオファーするにあたって、クロウはユニークな方法をとった。脚本と一緒に、1時間近い音楽のセレクションと、『ローカル・ヒーロー/夢に生きた男』(83)のソフトを送ったのだ。「それらがひとつのパッケージにまとまっていて、"僕がやりたいのはこういう感じのものだ"と言われた」と、マットは説明する。「『ローカル・ヒーロー/夢に生きた男』はドラマティックだけど同時に笑えるところもあるし、楽しさと哀しみの両方が味わえる映画だと説明された。おかげでクロウがどういう映画を作りたいかがよくわかった。この役を引き受けたのは、彼が監督だからだよ」
フレッシュな魅力を放つ役者陣
チーフ飼育員のケリーを演じるスカーレット・ヨハンソンは、マッケンナとクロウが書いた脚本に興味を惹かれた。「私を夢中にさせる素敵なセリフがあったの」と、ヨハンソンは語る。「それにストーリーがとても変わっていると思った。家族のことや、自分の情熱を見つけ、自分の力を信じることが描かれている。とてもリアルでガッツのある話で、恐怖を克服することも真正面から見据えているの」
ケリーの従姉妹のリリーには、『SUPER 8/スーパーエイト』(11)のエル・ファニングが抜擢された。撮影中に13歳の誕生日を祝った彼女は、自身の役柄についてこう説明する。「リリーはずっと動物に囲まれた生活をしてきたから、人との付き合い方を知らないの。ベンジャミンの息子のディランの気を惹こうとするけれど、男の子を好きになったことがないのでどうすればいいかわからない。それでも彼女は、ディランに自分のほうを向いてほしくて頑張るの」
そのディランを演じるコリン・フォードと、ディランの妹のロージーを演じるマギー・エリザベス・ジョーンズは、全米各地とオンラインを通じて行われたオーディションを勝ち抜いて選ばれた。彼らと共に動物園のセットで過ごした数カ月の撮影は、マットにとって、仕事だけに終わらない実りのある経験になったという。「子供たちと一緒の撮影はよかったよ。うちの子供たちもセットに来て彼らと交流できたしね」とマットは言う。
マットをはじめとする役者陣は、2週間のリハーサル期間中、ムーアパーク・カレッジ・ティーチング・ズーにある"動物学校"に入門。動物コーディネーターのマーク・フォーブスの指導のもと、飼育員の話を聞き、共演者となる様々な動物について学んだ。
9カ月かけて建設された動物園のセット
ローズムーア動物アドベンチャー公園の場面は、ロサンゼルスの北30マイルのサウザンドオークスにあるグリーンフィールド・ランチで撮影された。動物園のセットには、動物たちの囲いのほか、歩道や噴水、展望台、彫刻の庭、円形演舞場なども建てられたが、その設計と建設には9カ月の歳月が費やされた。
動物園のデザインを手がけるにあたり、プロダクション・デザイナーのクレイ・グリフィスは、アニマル・コーディネーターのマーク・フォーブスと会い、動物の囲いの配置についてアドバイスをもらった。「マークから"トラはクマのそばにしないでください。ライオンとトラがお互いに見える位置はやめてください。ライオンやトラやクマには、蹄のある動物を見せてはダメです"と言われたので、"それじゃ動物園をバラバラに切り離すってことだね"と言ったんだ」とグリフィスは笑う。「それぞれの囲いの配置を考えるのに、とんでもなく時間がかかったよ」
フォーブスと30人の専門の動物トレーナーで構成されたチームは、アフリカ・ライオン、ベンガルトラなど75種類の動物を扱った。それらの動物はすべて、飼い主やトレーナーと一緒に住まいを与えられ、南カリフォルニア地区の様々な動物施設に収容された。そして、撮影中は、毎日必要な動物だけを動物園のセットに連れてくるやり方が取られたので、動物たちがセットの囲いの中で待機させられることはなかった。